
肥満症治療を正しく理解しよう
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今回お答え いただいた ドクターはこの方
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター
糖尿病・内分泌内科 渡邉 琢也 医師

肥満症治療を正しく理解しよう
肥満症という疾患概念をご存じですか。痩せている、太っているのは身体的特徴ですが、ある条件を満たすと病気と診断されます。近年は薬物療法も充実し、肥満は治せるものになりつつありますが、保険診療のハードルは高く、誰しもが平等に治療を受けられる状況とはいえません。治療が必要な人に適切な医療を届けるため、今回の記事をお役立てください。
肥満と肥満症
人間の体型は体格指数(BMI)を用いて定義します。BMIは体重(kg)を身長(m)で2回割って計算し、BMIが25以上になると肥満と定義され、5刻みで肥満の程度が定められています。例えば身長170cm(1・7m)の標準体重は63・5kgで、BMIは22です。
肥満状態にあり、肥満に関連する健康障害(図1参照)を合併すると「肥満症」と診断できます。広く知られている病気から、人生に大きな影響を及ぼす重大な疾患まで幅広く含まれます。肥満症治療の目的は、重大疾患につながる可能性のある肥満状態を改善し、健康な人生を取り戻すことです。

Game Changerとなった GLP-1受容体作動薬
日本で肥満症が病気として定義されたのは2000年ですが、これまで社会的に十分認知されてこなかった理由は、「治療したくても武器がなかった」からです。従来は内服薬1剤と減量手術に頼ることだけでしたが、2024年、日本でも肥満症の新薬が使用可能となりました。それがGLP−1受容体作動薬です。
GLP−1には、脳の食欲中枢に働きかけて食欲を抑える作用と消化管の動きを鈍くして食べ物の消化を遅らせる作用があり、これらが相乗的に働き減量を援助します。ただし、薬の力のみで痩せるわけではありません。体重80kgの人は、80kgを維持できるだけの栄養を毎日摂っているためその体型が維持されています。70kgを目標とするなら、最終的には70kgに見合うカロリーを「当たり前」にする必要があります。しかし、食欲は人間の大きな欲求の一つで、簡単には変えられません。その難しい部分を援助するGLP−1は、医療者にとっても画期的な薬なのです
広く知られるようになった メディカルダイエット
GLP−1の登場で肥満症治療がより現実的になった一方、この薬が肥満症には至らない人のダイエットにも使われるようになり、「メディカルダイエット」としてSNSなどで広く知られるようになりました。
肥満症に対するGLP−1治療は、重大な健康障害の発症を防ぐ予防医療ですが、美容目的の使用は別のものとして考える必要があります。美容目的の使用自体を問題視するわけではありませんが、保険外診療であることを認識する必要があります。今年6月にマンジャロによるダイエットが社会問題となり、厚生労働省が警鐘を鳴らしました。この背景には、世界的に見ても、GLP−1を非肥満者に使用して安全性を検討したことはない、という事実があります。また、薬には副作用があり、吐き気、便秘、下痢などが比較的起こりやすく、稀に膵炎などの重大な副作用もあります。さらに保険診療外で起こった副作用は、国の被害救済制度の対象外となります。つまり、保険外診療で購入した薬の使用には自己責任が伴うのです。
どうすれば自分を守れるのか
現在の日本の保険診療では、治療の利益と不利益を十分に説明し、患者さんが理解した上で、自らの意思で治療を選択する「インフォームド・コンセント」が基本です。しかし、保険外診療では、必ずしも十分な説明と意思決定の場が設けられるとは限りません。自分が納得するまで説明を聞き、理解することは患者さん一人ひとりの権利です。そのことを忘れずに医師と向き合い、皆さんが適切な医療を受けられることを願っています。

JA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センター
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